和歌と俳句

河東碧梧桐

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

面白う聞けば夕日かな

手負猪萩に息つく野分かな

鹿啼いて麓は奈良のともし哉

明月のともし火遠し由比が浜

秋風や道に這ひ出るいもの蔓

市中や鴉人を見る秋の暮

栴檀の実を喰ひこぼす鴉かな

据風呂や湯の漏れて居る萩がもと

仁和寺の門田に雁のおつる也

据風呂に二人入りこむ夜寒かな

塔に上る暗きを出でゝ秋の空

頂に湖水あろといふ秋の山

墓と見えて十字架立つる秋の山

森の中に出水押し行く秋の雲

母衣かけて車にを聞く夜哉

昼過ぎつ芙蓉の下に鶏すくむ

見て過ぐる四条五条のかな

浅茅生や小路の中に女郎花

墓多き小寺の垣や花木槿

道端に刈り上げて稲のよごれたる

こめて恵心寺見えぬ朝かな

この願ひ新酒の升目寛うせよ

抱き起す萩と吹かるゝ野分かな

一筵唐辛子干す戸口かな