手負猪萩に息つく野分かな 碧梧桐
杉の木のたわみ見て居る野分哉 子規
やせ馬の尾花恐るゝ野分哉 子規
あれ馬のたて髪長き野分哉 子規
から笠につられてありく野分哉 子規
捨舟はかたよる海の野わき哉 子規
笠いきて地上をはしる野分哉 子規
番傘のぽゆきと折れし野分哉 子規
人力のほろ吹きちぎる野分哉 子規
針金に松の木起す野分哉 子規
ものうさは日の照りながら野分哉 子規
しづしづと野分のあとの旭かな 子規
野分すなり赤きもの空にひるがへる 子規
無住寺に荒れたきままの野分哉 子規
朝顔の花咲きしぼむ野分かな 虚子
銀杏の青葉吹き散る野分哉 子規
野分して上野の鳶の庭に来る 子規
野分の夜書読む心定まらず 子規
草むらに落つる野分の鴉哉 子規
鶏の空時つくる野分かな 虚子
砂山に薄許りの野分かな 漱石
抱き起す萩と吹かるゝ野分かな 碧梧桐
病癒えず蹲る夜の野分かな 漱石
地をすつて萩たのみなき野分かな 虚子
礎に砂吹きあつる野分かな 漱石
林中の宮に燈ともる野分かな 亞浪
罠なくて狐死にをる野分かな 碧梧桐
釣鐘のうなる許りに野分かな 漱石
山を出る日のくれぐれに野分かな 碧梧桐
女客我家気づかふ野分かな 虚子
國に聞く人語新し野分跡 虚子
骨立を吹けば疾む身に野分かな 漱石
銀真白牛売りし夜の野分して 碧梧桐
燭足りし頃を御堂の野分き初む 碧梧桐
山川に高浪も見し野分かな 石鼎
船と船つなげる綱に野分かな 石鼎
親船の艀そなへし野分かな 石鼎
筑紫路はあれちのぎくに野分かな 石鼎
由良の海野分の潮落しけり 月二郎
籠の魚刎ねずなりたる野分かな 月二郎
小走の犢に暮るゝ野分かな 泊雲
藪耐へて家現はるゝ野分かな 泊雲