皀莢の風にからめく月夜哉
あれ馬のたて髪長き野分哉
から笠につられてありく野分哉
捨舟はかたよる海の野わき哉
からぐろの葉うつりするや露の玉
露の玉小牛の角をはしりけり
白露の上に濁るや天の河
星一ツ飛んで音あり露の原
夕月に露ふりかける尾花哉
芋の葉に月のころがる夜露哉
火葬場の灰におきけり夜の露
名月や露こしらへる芋の上
露いくつ絲瓜の尻に出あひけり
夜の露もえて音あり大文字
花火やむあとは露けき夜也けり
白露を見事にこぼす旭哉
白露や蕣は世に長きもの
白露やよごれて古き角やぐら
闇の空露すみのぼる光り哉
風吹て京も露けき夜也けり
露夜毎殺生石をあらひけり
佛像の眼やいれん露の玉
宵闇や露に引きづる狐の尾
魂棚の飯に露おくゆふべ哉
白露の中に泣きけり祇王祇女
猪や一ふりふるふ朝の露
大佛やかたつら乾く朝の露
白露の中に重なる小鹿哉
名月やうしろむいたる石佛
かさの露動けば月のこぼれけり
陣笠に鶴の紋ありけふの月
笠いきて地上をはしる野分哉
秋風や京の大路の朱傘
つるつると笠をすべるや露の玉
朝霧や女と見えてたびの笠
聞きにゆけ須磨の隣の秋の風
秋の雲いよいよ高く登りけり
虚無僧の深あみ笠や盆の月
秋の雨兩天傘をなぶりけり
傘の端に三日月かゝる晴間哉
番傘のぽゆきと折れし野分哉
月蝕や笠きて出たる白拍子
傘の端のほのかに白し雨の月
光起が百鬼夜行く野分哉
蛇の舌まだ赤し秋の風
塔一ツ霧より上に晴れにけり
はせを泣き蘇鐵は怒る野分哉
養老の月を李白にのませばや
骸骨の浮み出るや水の月