和歌と俳句

今日の月

大空の真ただ中やけふの月 子規

陣笠に鶴の紋ありけふの月 子規

鎌倉に波のよる見ゆけふの月 子規

江の嶋は亀になれなれけふの月 子規

西行はどこで歌よむけふの月 子規

玉になる石もあるらんけふの月 子規

雪の富士花の芳野もけふの月 子規

一寸の草に影ありけふの月 子規

芋阪の団子屋寐たりけふの月 子規

今日の月馬も夜道を好みけり 鬼城

父のなき子に明るさや今日の月 しづの女

泣きぼくろ彼女もちけりけふの月 青邨

今日の月すこしく缺けてありと思ふ 夜半

煙突の空をわたりぬ今日の月 播水

けふの月長いすすきを活けにけり 青畝

今日の月さいてゐるなり店の先 月二郎

ひとりゐて見し日もありぬ今日の月 石鼎

今日の月多摩の濁りを惜しむのみ 花蓑

うす絹をまとふ恨や今日の月 花蓑

木の間なる低き池見ゆけふの月 秋櫻子

旬日のひげも剃らずにけふの月 草城

今しもやさしのぼるらしけふの月 草城

けふの月ことしは見るや下駄を穿き 草城

夜に入りて微熱しりぞくけふの月 草城

今日の月わがラッセルをききすます 波郷

妻が観てつぶさに告ぐる今日の月 草城

手にのせて豆腐きるなり今日の月 万太郎

今日の月天平雲はなかりけり 青畝

ありあはす山を身近かに今日の月 蛇笏

石段を下りわづらふや今日の月 万太郎