和歌と俳句

露草 月草 ほたる草 鴨跖草

俊頼
いかばかり徒に散るらん秋風のはげしき野辺の露草の花

西行
うつり行く色をばしらず言の葉の名さへあだなる露草の花

月草の色見えそめて雨寒し 暁台

月くさは露もてはなをくゝるかな 暁台

良寛
我が待ちし秋は来にけり月くさのやすの川原に咲きゆく見れば

茂吉
旅ゆくと 泉に下りて 冷々に 我が口そそぐ 月くさの花


鬼怒川の篠に交れる鴨跖草は刈る人なしに老ゆといはずやも


病みてあればともしきものかつゆ草は馬がはめども枯れなくといふに

露草咲けりほの白みゆく海よりの風に 山頭火

日は落つれ草踏みゆけば月草の咲く 山頭火

晶子
露草は涙先立つ話をばする萱の葉のかたはらに咲く

八一
水かれしはちすのはちにつゆくさのはなさきいでぬあきはきぬらし

牧水
ながめゐて 眼ぞまどふなる 草むらの 露草の花の 花のしげきに

露草の花みづみづし野分晴 泊雲

露草の瑠璃をとばしぬ鎌試し 禅寺洞

凋んでも月がさすなり蛍ぐさ 草城

一叢の露草映すや小矢部川 普羅

露草や飯噴くまでの門歩き 久女

草むらや露草ぬれて一ところ 久女

白秋
露草は 朝露しげし 今朝咲きて 涼しかるらし 黄の小蕊立ち

露草に祭の玩具落しけり かな女

露草や郵便めてる門の坂 多佳子

露草のおがめる如き蕾かな たかし

露草が露をふくんでさやけくも 山頭火

二ひらの花びら立てて蛍草 たかし

つゆ草のさけばとて雨ふるふるさとは 山頭火

露草を面影にして恋ふるかな 虚子

蝶とりし網を伏せおく蛍草 立子

ことごとくつゆくさ咲きてきつねあめ 蛇笏

朝の日の母を訪はばや蛍草 耕衣

蛍草見て立ちにけり戦了る 楸邨

渓沿ひにつゆくさのさく黍畑 蛇笏

鉄塔の一脚に触れ蛍草 たかし

つゆくさの金いちじるくまたほのか 蛇笏

舟蟲が来て露草の気高さよ たかし

露草や室の海路を一望に 汀女

千万の露草の眼の礼をうく 風生