和歌と俳句

長谷川かな女

潦渡り走りぬ野分人

銀やけて月見えわかず秋扇

佇つときは頼りて二人秋袷

飽きし日を佇ちつゞけけり花芙蓉

庭に下りてホ句書いて来ぬ秋の暮

秋風や簀子上りし葛の蔓

新蕎麦に満月近くなりしかな

秋雨の子を遊ばする蓄音機

渡り鳥仰ぐや茱萸を食べながら

観菊や芝生の人に御会釈

秋草にとられたる手のあたゝかし

子の床によりて句作の夜寒かな

燈籠に母思ふ事しげしげと

母に吊る盆燈籠を消さじとぞ

浮き沈む舟限りなし影燈籠

あげ汐に廻りて来たり走馬燈

母歩く庭と思ひぬ盆の月

音もなき待宵の雨いたみけり

雨に剪りし芒香りぬ十三夜

灯して子とあそびけり初嵐

去る人と知らず小菊に文を書く

露草に祭の玩具落しけり