手毬唄きこゆる生涯の家と思ふ
湯にぬくめ喪の正月の五十の身
洗はれて櫓櫂細身や注連飾
吹かれつつ獅子舞とゆく伊良胡岬
海に流れ出でて初日の荒筵
未来ひとつひとつに餅焼け膨れけり
年いよいよ水のごとくに迎ふかな
年酒酌む夜発つ若者らと語り
獅子舞の来る町内に古りにけり
唐子立つごとく十あまり福寿草
この世よりあの世思ほゆ手毬唄
屠蘇の座に遠山脈も加はれり
万歳の三河の波の鼓のごとし
水底に元日の日のあふれけり
日暮れてはつねの老人お元日
いくさなきをねがひつかへす夜の餅
ゆふぐれの枯木に独楽をぶつけたり
橙垂れ道せばめたり蜑が家
屠蘇ふふみ喜寿うべなうてばかりかな
初御空大王松よりひらけたる
田作の金色なすを嘉とせり
年改まることのさだかに松の風
初昔白き卓布にうすき翳
門川の音追うてゐる初昔