初夢や金も拾はず死にもせず
煩悩は百八減つて今朝の春
春王の正月蟹の軍さ哉
元日に生れぬ先の親恋し
山里は割木でわるや鏡餅
砕けゆや玉と答へて鏡餅
着衣始め紫衣を給はる僧都あり
薺摘んで母なき子なり一つ家
生れ得てわれお目出度顔の春
五斗米を餅にして喰ふ春来たり
臣老いぬ白髪を染めて君が春
元日や蹣跚として思ひ
馬に乗つて元朝の人勲二等
詩を書かん君墨を磨れ今朝の春
元日や吾新たなる願あり
松立てて空ほのぼのと明る門
貧といへど酒飲みやすし君が春
床の上に菊枯れながら明の春
元日の山を後ろに清き温泉
稍遅し山を背にして初日影
駆け上る松の小山や初日の出
甘からぬ屠蘇や旅なる酔心地
此春を御慶もいはで雪多し
正月の男といはれ拙に処す
色 々の雲の中より初日出
初鴉東の方を新枕