和歌と俳句

元旦 元朝 歳旦

元朝の見るものにせん富士の山 宗鑑

元朝や虚空暗く只不二許り 子規

元朝や皆見覚えの紋処 子規

元朝の上野静かに灯残れり 子規

馬に乗つて元朝の人勲二等 漱石

元朝の氷すてたり手水鉢 虚子

晶子
山しろや古き都は寺寺の元朝つぐる鐘めでたけれ

晶子
元朝や馬に乗りたるここちしてわれは都の日本橋ゆく

晶子
元朝や経の声する大寺にかげろふもゆる軒下の土

晶子
元朝やわか水つかふ戸に近き柳の花に淡雪ぞふる

元旦や前山颪す足袋のさき 蛇笏

晶子
今ひと度西の都の元朝を緋の帯しめてわれに練らしめ

晶子
わが踏みて板の廊下を鳴らすこそをかしかりけれ元日の朝

晶子
元朝や十畳の間の片隅の白き机に肱つくわれは

晶子
わたつみの波の上より渡りきぬ黄金の翅の元朝の風

元朝の宿を出でたつ網頭 石鼎

晶子
元朝や金の色なる薔薇の花目には見えねど数しらず咲く

晶子
わが住める山の続きに神達のあるここちする元日の朝

晶子
元朝のまだ暗くして柑子の香酒の香混り立つ家のうち

晶子
春と云ふめでたき心育てこし昨日を思ふ元旦にして

元旦やふどしたたんで枕上 鬼城

歳旦の槍の穂立つる朴冬木 風生