須磨の苫吾世に成ぬ冬ぼたん 言水
御仏は伎芸天女や寒牡丹 虚子
咲きみちし寂しさありぬ寒牡丹 多佳子
寒牡丹臆しげもなく濃かりけり 淡路女
寒牡丹雪舟の奇峯雪をかつぐ 青邨
寒牡丹挿して淋しさ忘るるか たかし
人形の前に崩れぬ寒牡丹 虚子
霜除に覗き窓あり寒牡丹 たかし
微禄しつつ敢えて驕奢や寒牡丹 たかし
寒牡丹凍てたる地に花低き 草城
日あたりてあはれなりけり寒牡丹 草城
苞割れば笑みこぼれたり寒牡丹 虚子
父の世の如金屏と寒牡丹 たかし
藁覆に紅玉包む寒牡丹 たかし
霜除を出て金屏に寒牡丹 たかし
そのあたりほのとぬくしや寒牡丹 虚子
大幅の楷書に浮ぶ寒牡丹 たかし
寒牡丹活け旅人の来り去る たかし
覆とり互いに見ゆ寒牡丹 虚子
寒牡丹炭ひく音をはばからず 多佳子
寒牡丹山家の日ざしとどめ得ず 多佳子
寒牡丹貨車が地響きしてまぶし 知世子
寒牡丹この日崩ると記憶せむ 草城
うすら日はありにけるかも寒牡丹 草城
寒牡丹足音ことりことり去る 草城
寒牡丹月明にしていたましき 草城
値遇の縁仮初ならず寒牡丹 風生
冬牡丹あまり露骨に脚がたつ 楸邨
寒牡丹咲きしぶり咲きしぶりけり 草城
薫香をひろげて御堂寒牡丹 爽雨
背山より今かも飛雪寒牡丹 爽雨
寒牡丹まだ見ず障子内に在り 爽雨
寒牡丹雪踏み鳴らし見るに燃ゆ 爽雨