わが起てば影法師も起つ冬燈
雪降りて蕪村忌にしてクリスマス
炭斗のすぐ軽くなるかごとかな
湖の名をもらひたる駅の冬
値遇の縁仮初ならず寒牡丹
さるをがせつけてかなしき年木かな
起き臥しの一と間どころを掃納め
老どちの閑葛藤や冬の蠅
多勢の眼に一片の散紅葉
枯蓮の折れたる影は折れてをる
餓鬼山も猫又山も枯れわたり
著ぶくれて浮世の義理に出かけけり
皹といふいたさうな言葉かな
寒といふ恐ろしきものに身構へぬ
きびきびと万物寒に入りにけり
枯るるもの枯れ枯れ残るもの残る
萩枯れて音といふものなかりけり
瘤の顔ひきつり笑ふ枯欅
枯野行き橋わたりまた枯野行く
見守れば寒燈も亦見守りぬ
薄墨のひまの紺青しぐれ空
わが心濡るる時雨に句碑も濡れ
わが咳に応ふる遠き水の面