睡蓮の敷き重なりし広葉かな
一ならび睡蓮の葉の吹かれ立つ
吹き立ちし睡蓮の葉しづまりぬ
軒下に雨よけて見る牡丹かな
真すぐに合歓の花落つ水の上
紫はげて咲きゐる菖蒲かな
赤と黄の麦藁籠をあみはじむ
睡蓮の泥まみれなる浮葉かな
遙かなる新樹の中に塔二つ
足跡を蟻うろたへてわたりけり
おほばこの花の影あり草の上
葛の葉の上を風吹く暑さかな
水飯のごろごろあたる箸の先
金亀子数多の蟻に曳かれゆく
をだまきと麦と露草を生けにけり
まろまろと麦の畑や垣の外
地につきて赤く枯れたる苺の葉
つんつんと遠ざかりけりみちをしへ
昼顔や笹の葉までにまきつきて
布袋草分らぬほどに流れをり
布袋草埃の道に捨てゝあり
草市に夏菊山とつまれたり
大いなる落葉の下へ蟻のみち
竹藪のもくもく動く夏の山