和歌と俳句

星野立子

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睡蓮の敷き重なりし広葉かな

一ならび睡蓮の葉の吹かれ立つ

吹き立ちし睡蓮の葉しづまりぬ

軒下に雨よけて見る牡丹かな

真すぐに合歓の花落つ水の上

紫はげて咲きゐる菖蒲かな

赤と黄の麦藁籠をあみはじむ

睡蓮の泥まみれなる浮葉かな

遙かなる新樹の中に塔二つ

足跡をうろたへてわたりけり

おほばこの花の影あり草の上

葛の葉の上を風吹く暑さかな

水飯のごろごろあたる箸の先

金亀子数多の蟻に曳かれゆく

をだまきと麦と露草を生けにけり

まろまろと麦の畑や垣の外

地につきて赤く枯れたる苺の葉

つんつんと遠ざかりけりみちをしへ

昼顔や笹の葉までにまきつきて

布袋草分らぬほどに流れをり

布袋草埃の道に捨てゝあり

草市に夏菊山とつまれたり

大いなる落葉の下へ蟻のみち

竹藪のもくもく動く夏の山