手を伸す水の少女か一むらの濃き緑より睡蓮の咲く 晶子
水に焚く夏の香炉のけぶりたるうす紫の睡蓮の花 晶子
恋するや遠き国をば思へるやこのたそがれの睡蓮の花 晶子
睡蓮の花びらの先苦しくも少し尖れりわが心ほど 晶子
紫の睡蓮の花ほのかなる息して歎く水の上かな 晶子
この三朝あさなあさなをよそほひし睡蓮の花今朝はひらかず 土屋文明
あくがれの色とみし間も束の間の淡淡しかり睡蓮の花 土屋文明
今朝ははや咲く力なき睡蓮やふたたび水にかげはうつらず 土屋文明
睡蓮の花沈み今日のこと終へず 亜浪
睡蓮に日影とて見ぬ尼一人 蛇笏
睡蓮や鬢に手をあてて水鏡 久女
群離れ咲く睡蓮にかしづく葉 悌二郎
睡蓮に胸のあたりを切らるるよ 耕衣
睡蓮の明暗たつきのピアノ打つ 草田男
睡蓮に雨意あり胸の釦嵌む 草田男
睡蓮の葉の押さへたる水に雨意 草田男
睡蓮や死ならぬもの以て肉浄めよ 草田男
老の賜ひし杖睡蓮の花へ曳く 草田男
睡蓮点々主情の人の背高く 草田男
睡蓮沿ふ山路ゆきつつ文字つづる 草田男
睡蓮や目立の音に甕坐る 不死男
眼中に睡蓮の趺坐匂ふかな 不死男
睡蓮の敷き重なりし広葉かな 立子
一ならび睡蓮の葉の吹かれ立つ 立子
吹き立ちし睡蓮の葉しづまりぬ 立子
睡蓮の汀に睫長き子よ 立子
静かさや睡蓮覚めし朝の雨 立子
睡蓮やまづ暮のいろ石にあり 楸邨
睡蓮の葉に掌をかけて亀しばし たかし
睡蓮の花の汀に亭の階 たかし