和歌と俳句

睡蓮 未草

晶子
手を伸す水の少女か一むらの濃き緑より睡蓮の咲く

晶子
水に焚く夏の香炉のけぶりたるうす紫の睡蓮の花

晶子
恋するや遠き国をば思へるやこのたそがれの睡蓮の花

晶子
睡蓮の花びらの先苦しくも少し尖れりわが心ほど

睡蓮やつひに暮れたる水のいろ 万太郎

晶子
紫の睡蓮の花ほのかなる息して歎く水の上かな

睡蓮に水玉走る夕立かな 泊雲

睡蓮や鯉の尾水の上に出て 石鼎

睡蓮に日影とて見ぬ尼一人 蛇笏

睡蓮や鬢に手をあてて水鏡 久女

午すぎの虚ろごころや黄睡蓮 播水

睡蓮の敷き重なりし広葉かな 立子

一ならび睡蓮の葉の吹かれ立つ 立子

吹き立ちし睡蓮の葉しづまりぬ 立子

睡蓮に旅の朝夕さだめけり かな女

睡蓮に浮巣やあらん澳の波 石鼎

睡蓮の鉢に雨ふる静かかな 青邨

鳰がひく水脈睡蓮の花よりす 石鼎

黄睡蓮鏡にもある池の面 石鼎

睡蓮や鯉の分けゆく花二つ たかし

睡蓮の花沈み今日のこと終へず 亞浪

睡蓮の明暗たつきのピアノ打つ 草田男

睡蓮に雨意あり胸の釦嵌む 草田男

睡蓮の葉の押さへたる水に雨意 草田男

睡蓮やまづ暮のいろ石にあり 楸邨

睡蓮や死ならぬもの以て肉浄めよ 草田男

睡蓮の汀に睫長き子よ 立子

老の賜ひし杖睡蓮の花へ曳く 草田男

睡蓮の花の汀に亭の階 たかし

睡蓮点々主情の人の背高く 草田男

睡蓮沿ふ山路ゆきつつ文字つづる 草田男

睡蓮や目立の音に甕坐る 不死男

群離れ咲く睡蓮にかしづく葉 悌二郎

静かさや睡蓮覚めし朝の雨 立子

眼中に睡蓮の趺坐匂ふかな 不死男

睡蓮に胸のあたりを切らるるよ 耕衣