和歌と俳句

定家
風かよふ扇に秋のさそはれてまづ手なれぬるとこの月かげ

良経
手に馴らす夏の扇と思へどもただ秋風のすみかなりけり

冨士の風や扇にのせて江戸土産 芭蕉

ひらひらと挙るあふぎや雲の峰 芭蕉

松はなし扇の風をひびくまで 千代女

主しれぬ扇手に取酒宴かな 蕪村

渡し呼ぶ草のあなたの扇哉 蕪村

暑き日の刀にかゆる扇かな 蕪村

貯ともなくて数あるあふぎ哉 太祇

摘ずとも花あり香あり白扇 青蘿

海の月扇かぶつて寝たりけり 一茶

夕暮の腮につつ張る扇哉 一茶

手にとれば歩行たく成る扇哉 一茶

鼻先にちゑぶらさげて扇かな 一茶

日帰りの小づかひ記す扇哉 一茶

贈るべき扇も持たずうき別れ 子規

しひられてもの書きなぐる扇哉 子規

あやまつて清水にぬらす扇哉 子規

ざれ歌の手跡めでたき扇哉 子規

かざすだに面はゆげなる扇子哉 漱石

晶子
かたみぞと風なつかしむ小扇の要あやふくなりにけるかな

二三騎は木の下かげにはたはたと扇つかへり下加茂の宮

畳む時扇淋しき要かな 万太郎

扇絵やありともなくて銀の波 鬼城