和歌と俳句

日傘

清水の阪のぼり行く日傘かな 子規

寺を出る稚兒三人の日傘かな 虚子

鈴の音のかすかにひびく日傘かな 蛇笏

日傘さし荷蘭陀こちを向きにけり 龍之介

畳み持てば君に柄長な日傘かな 碧梧桐

日傘さす人に栄えある渡船かな 放哉

久松の日傘みはやす針子かな 万太郎

深川の埃侘ぶなり古日傘 万太郎

船中に日陰を作る日傘かな 鬼城

店々へ顔かくし行く日傘かな 喜舟

早月を見出でゝうれし夕日傘 花蓑

京人の言葉やさしき日傘かな 淡路女

舞妓見てたしかに京や日傘 みどり女

照り降りにさして色なし古日傘 久女

病人に仕へて古りし日傘かな 月二郎

水浅黄ほのかにひらく日傘かな 草城

砂山に日傘畳んで遊びけり 草城

遠くゆく七里ヶ浜の日傘かな 花蓑

江の島の外ゆく舟の日傘かな 花蓑

砂山に泳がぬ妹の日傘見ゆ 草城

ほろほろと雨つぶかかる日傘かな 石鼎

ひらきたる日傘の陰に這入りけり 夜半

内赤く外高ネる日傘かな 虚子

吊橋に立ちて日傘を廻しをり 風生

谷間はやかげり来し日傘かな 青邨

雨ありしあとの日傘や菖蒲園 花蓑

パラソルを松葉牡丹に干しつらね 石鼎

加茂川の紺の水辺の日傘かな 石鼎

日傘とは梅の蔭よりさして出る 石鼎

細き柄の長くて軽くて日唐傘 石鼎

胸病めば農婦日傘をさして通る 草田男

陰気なりこのパラソルの売場悪し 杞陽

パラソル売場造花の藤のかげの鏡に 杞陽

はたと合ふ眼の悩みある白日傘 蛇笏

色深きふるさと人の日傘かな 汀女

日傘一つ女気を絶ちたる木の山へ 草田男

紺碧の波にたゝめる日傘かな 占魚

ぬけうらを抜けうらをゆく日傘かな 万太郎

風あまり強くて日傘たたみもし 虚子

海へゆく色とりどりの日傘かな 万太郎

ふつふつと日傘のひまに泥地獄 汀女

狐舎を見る朱の日傘を傾けつ 波郷

鏡台の柄に日傘吊り独り棲み 草田男

柄の長き日傘が流行り来りけり 立子

乗るまでもなし大佛へ日傘さし 立子

日傘閉づ大山門に侏儒となり 爽雨

山路ゆくさしかけ日傘しかと寄れ 爽雨