都電来る又都電来る夕立中
娘と我の性火取蟲誘蛾燈
夕焼の今紫にカルカッタ
月涼しよこぎる牛に車とめ
朝焼けや水甕を頭に一列に
水撒けば烏とんとんと集り来
村人は荷を頭にかざし麦は熟れ
夕立晴ピサの斜塔につきにけり
薫風や赤ネクタイの老紳士
皆が見る私の和服パリ薄暑
熱帯魚透きてめらめら水草かな
楽しさや避暑二日目の朝掃除
卯の花の咲けばそぞろに旅心
早乙女等榛の木道を次の田へ
木下闇とび来し蝶に空気揺れ
柄の長き日傘が流行り来りけり
合歓散るを見をる我等に僧寄り来
客人に昼寝すすめてゐてねむし
朝涼し雑巾がけに追はれ掃く
鉄線花咲きそめにけり父の窓
鉄線の咲けば咲くよと母歎く
淋しさや父よ父よと明易や
旅に出て父見し山河茂り合ひ
囲づくりに余念なき蜘蛛太藺中