和歌と俳句

星野立子

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青梅の落つる大地や雨上り

だんだんと拡がる西日大卓子

青柿のまことしやかに葉をかむり

魂の抜けはててゐる昼寝かな

塀出来て向日葵ばかり見ゆる家

出て見ては此の家涼しと戻り来る

登山する男女や夜の諏訪の森

貸しあへる鏡や帯や避暑の宿

風呂焚くもたのしきものよ避暑の荘

あがそへぬ年寄じみの日焼の手

夏痩をいたはり心帯締むる

夏帽子リボンを派手に阿弥陀かな

湯あみせし如く句碑あり緑蔭

叩きみるまさをき棕櫚の蠅叩

涼しさや峠登れば網走湖

虎杖狩勝峠汽車徐行

潮浴びて他国を知らぬ子供等よ

現し世を日々大切に衣更

娘とは嫁して他人よ衣更

たのしみの有田に入りぬ町は初夏

垣ざかひまで来し朝日苺つむ

よぶ昔も今も同じ唄

放心の五分十分梅雨の蝶

人の世に月見草あり夜明あり

の二人がひらりひらり歩く