和歌と俳句

虎杖の花 いたどりのはな


虎杖のおどろが下をゆく水の多藝津速瀬をむすびてのみつ


眞熊野の山のたむけの多藝津瀬に霑れ霑れさける虎杖の花


虎杖のおどろがしたに探れども聲鳴きやまず土ごもれかも

晶子
妙高の裾野の道は広けれど中に藻のごと虎杖しげる

晶子
新しく人の開きて新しく廃道となりいたどり這ふも

晶子
妙高の山虎杖のくれなゐの鞭をつくりぬ天馬に乗らん

晶子
霧の夜の哀れなりける月に似て青く曇れるいたどりの花

白秋
鷲ひとつ石のうらべに彫りにけりそなたにあらき虎杖の花

虎杖の花月光につめたしや 青邨

いたどりの花万傾や月の下 青邨

茂吉
いたどりの白き小花のむれ咲くを幾たびも見て山を越え来ぬ

虎杖の花に鏡山肌かくあらは 野風呂

いづこにもいたどりの紅木曾に泊つ 多佳子

虎杖の花やほつきを並べおき 楸邨

いたどりの一節の紅に旅曇る 多佳子

虎杖や狩勝峠汽車徐行 立子

虎杖の花に牧歌の生れけり 虚子

虎杖は城塁の花石の花 誓子

虎杖の花に天上天下かな 風生