和歌と俳句

涼し

西行
むすぶ手に涼しき影をそふるかな清水にやどる夏の夜の月

すずしさや水に柳の影法師 宗鑑

涼しさに四つ橋を四つ渡りけり 来山

此あたり目に見ゆるものは皆涼し 芭蕉

南もほとけ艸のうてなも涼しかれ 芭蕉

涼しさを我宿にしてねまる也 芭蕉

涼しさやほの三か月の羽黒山 芭蕉

汐越や鶴はぎぬれて海涼し

小鯛さす柳涼しや海人がつま

涼しさを飛騨の工が指図かな 芭蕉

涼しさや直に野松の枝の形 芭蕉

すずしさを絵にうつしけり嵯峨の竹 芭蕉

松風の落葉か水の音涼し

涼しさよ白雨ながら入日影 去来

すゞしさや浮洲のうへのざこくらべ 去来

すゞしさや朝草門ンに荷ひ込 凡兆

すずしさや昔かやうの祖父と祖母 野坡

涼しさのまことは杉の梢なり 涼菟

すずしさや手は届かねど松の声 千代女

唐崎の昼は涼しき雫かな 千代女

涼しさに麦を月夜の卯兵衛哉 蕪村

涼しさや鐘をはなるるかねの声 蕪村

すずしさをあつめて四つの山おろし 蕪村

涼さやかしこき人の歩行渉り 蕪村

涼しさや見世より裏を東山 蕪村

すゞしさや蔵の間より向島 白雄

すゞしさや八十島かけて月一つ 青蘿

すゞしさや惣身わするゝ水の音 青蘿

すゞしさや垣のとなりは極楽寺 青蘿

涼しさや欠釜一つひとりずみ 一茶

涼しさや半月うごく溜り水 一茶

涼しさや山から見える大座敷 一茶

凉しさや笠へ月代そり落し 一茶

凉しさに弥陀同躰のあぐら哉 一茶

凉しさや藍よりもこき門の空 一茶