結ぶより早歯にひびく泉かな 芭蕉
青松葉見えつつ沈む泉かな 子規
駒の鼻ふくれて動く泉かな 虚子
天つ日のふとかげりたる泉かな 風生
薙ぎ草の落ちてつらぬく泉かな 蛇笏
榛の枝を山蛤おつ泉かな 蛇笏
汗冷えつ笠紐浸る泉かな 蛇笏
深山雨に蕗ふかぶかと泉かな 蛇笏
山泉杜若實を古るほとりかな 蛇笏
ハンケチを濡らし泉を去りゆけり 青邨
萱わけて馬の来てをる泉かな 秋櫻子
あとさきに友待つ泉掬みこぼす 悌二郎
泉の底明し顔浸け眼ひらけば 多佳子
手をやれば笊を蹶りをる泉かな 青畝
紺青の蟹のさみしき泉かな 青畝
はしりもて杓しりぞきし泉かな
刻々と天日くらき泉かな 茅舎
泉湧く青銅古き大鉢に 汀女 南仏バンスにて
諸手さし入れ泉にうなずき水握る 草田男
妻と来て泉つめたし土の岸 草田男
苔厚き長枝の下の泉湧く 草田男
水の穂をみてぐらと揺り泉湧く 草田男
泉辺に日のありどころ妻問へり 草田男
泉辺のわれ等に遠く死は在れよ 草田男
諸手さし入れ泉にうなづき水握る 草田男
夕影のしぬびやかなる泉かな 草城
灼くる葉を樹頭にしたり泉湧く 林火
泉の穂咽喉の奥うつごぼごぼと 楸邨
泉の際一個老醜の顔うかべ 静塔
静臥の胸泉見て来し動悸せり 波郷
泉への道後れゆく安けさよ 波郷
少年の去りし石踏み泉汲む 波郷
泉掬む双膝双掌ひしと合はせ 波郷
湧きいづる泉の水の盛りあがりくづるとすれやなほ盛りあがる 窪田空穂