和歌と俳句

川端茅舎

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武蔵野を舗道はしれり青芒

火取虫立正案安国論を読む

老鶯の谺明るし芭蕉かげ

鶯や夏ゆふぐれの光陰に

かたつむり背の渦巻の月に消ゆ

五月闇より石神井の流れかな

河骨の金鈴ふるふ流れかな

睡蓮に鳰の尻餅いくたびも

三宝寺池の翡翠藤浪に

水底に見ゆ踏石や青芒

茴香の夕月青し百花園

月見草梟の森すぐそこに

月見草蘂さやさやと更けにけり

明易き梟に覚め庭を掃く

ほうほうと梟近き門火かな

隠元を膝に娘や滝の前

霊池とて四方に湧く音よ

渉る子等皆をマタノゾキ

水を打つ夕空に月白う刎ね

虫干や父の結城の我が似合う

虫干や襟より父の爪楊枝

滝打つて行者三面六臂なす

忽ちに忿怒の那咤や滝行者

滝行者簑のごとくに打ち震ひ

行者去り滝光明をうしなひぬ