和歌と俳句

川端茅舎

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かまつかの色の萠しの震ふ

高し筑紫次郎は闇にひそみ

渡し来る一点の灯と蛍火

瀧壺に唐紅の蟹走る

巌頭に砥石を置いて瀧小さし

瀬と淵とならびて磧涼しさよ

観世音菜殻火に掛けたてまつれ

菜殻火に皆立ちたまふ佛達

菜殻火焼く火柱立ちぬ榎寺

菜殻火や天拝山の松は折れ

神苑の四方より麦を打つこだま

落花煩悩匂ふ無尽かな

細道へ崖よりこぼれえごの花

著莪の花仰ぐ青き日崖を洩り

著莪の花崖の天日深緑

桜んぼくろき雀のあたまかな

栗の花白痴四十の紺絣

明易き鶯聞きぬ二三日

でで虫ら舗道横ぎり牛乳来る

花馬鈴薯鼠のごとく雀ゐて

靄の視界電柱二本青トマト

茄子もぐけはひは靄の不可視界

トゲ残るきのふの不快合歓に覚め

月見草旦の露のみどりなる

黄の上にみどりの露や月見草