和歌と俳句

じゃがいもの花

白秋
魚かつぎ 丘にのぼれば 馬鈴薯の 紫の花 いま盛りなり

白秋
れいろうと 不尽の高嶺の あらはれて 馬鈴薯畑の 紫の花

白秋
夏浅き 月夜の野良の 家いくつ 洋燈つけたり 馬鈴薯の花

じやが芋の花に屯田の詩を謡ふ 鬼城

じやが芋咲いて浅間ケ嶽の曇かな 鬼城

白秋
夏、夏、夏、露西亜ざかひの黄の蕋の花じやがいもの大ぶりの雨

白秋
ワレライマヤコクキヤウニアリ、むらさきの花じやがいもの盛りに打電す

白秋
刈りしほと 麥は刈られし こちごちを このごろしろし 馬鈴薯の花

じやがいもの花のさかりのゆふまぐれ 草城

みつしよんの丘のじやがたらの咲く日かな 汀女

馬鈴薯の花の日数の旅了る 波郷

花馬鈴薯鼠のごとく雀ゐて 茅舎

馬鈴薯の花に曇りし二三日 楸邨

馬鈴薯の花より深く暮れにけり 楸邨

明日より試射馬鈴薯の花に蝶舞へり 三鬼