和歌と俳句

真菰 まこも かつみ

万葉集・巻十一
真菰刈る 大野川原の 水隠りに 恋ひ来し妹が 紐解く我れは

古今集・恋 貫之
真菰刈る 淀の澤水 雨ふれば つねよりことに まさるわが恋

古今集・恋 よみ人しらず
陸奥の 安積の沼の 花かつみ かつ見る人に 恋ひやわたらむ

好忠
下り立ちて 忍びに淀の 真菰刈る あなかま知らぬ 人の聞くがに

経信
三島江の 入江のまこも 雨ふれば いとどしほれて かる人もなし

匡房
真菰かる 淀の澤水 ふかけれど そこまで月の かげはすみけり

顕季
さみだれに 安積の沼の 花かつみ 底の玉藻と なりやしぬらむ

千載集 顕輔
さみだれに 浅沢沼の 花かつみ かつ見るままに 隠れゆくかな

頼政
春過ぎて 幾日になれば 真菰草 あさりし駒の 食み帰るらむ

西行
みな底に しかれにけりな さみだれて 水の眞菰を かりにきたれば

西行
五月雨の をやむ晴間の なからめや 水のかさほせ まこもかり舟

西行
五月雨の 晴れぬ日數の ふるままに 沼の眞菰は みがくれにけり

定家
五月雨に みづなみまさる まこもぐさ 短くてのみ あくる夏の夜

水深く利鎌鳴らす真菰刈 蕪村

晶子
真菰伏すかぜにまじりてはしきやし香取の宮の大神はある

さはさはと真菰動くや鎌の音 虚子

真菰刈る童に鳰は水走り 秋櫻子

真菰刈童がねむる舟漕り 秋櫻子

舟に乗る人や真菰に隠れ去る 虚子

真菰中鹿島詣での舟ひろふ 爽雨

吹き靡き真菰の中に杭見ゆる 立子

ネオンの灯青真菰より立ちのぼる 青邨

舟先に真菰へなへな節沈む 夜半

夕焼の風に消えゆく真菰かな 万太郎