和歌と俳句

高浜虚子

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明治39年

今敷きし船の毛布や松落葉

寂として残る土階や花茨

卯の花や佛も願はず隠れ住む

山の温泉の一号室や明易き

十薬も咲ける隈あり枳殻邸

門額の大字に点す蝸牛かな

主客閑話ででむし竹を上るなり

怠らぬ読書日課や枇杷を食ふ

高僧も爺で坐しぬ枇杷を食す

上人の俳諧の灯や灯取虫

青田より水の高さや蓴沼

二人して荷ふ夜振の獲物かな

すたれゆく町や蝙蝠人に飛ぶ

御領地の堺木うちに夏野かな

二階人暑さにまけてやめりけり

かちととぶ髪切蟲や茂り中

かくて身は蟻にひかるる毛蟲かな

稚児の手の墨ぞ涼しき松の寺

冷奴死を出で入りしあとの酒

灯消えたり卓上にの香迷ふ

さる程に金魚にもあく奢りかな

君が代の裸みはやせ常陸山

夏痩の細き面輪に冠かな

夏痩の身をつとめけり婦人会

の中月の白さに送りけり