順礼の笠に願ある櫻かな
更けゆくや花に降りこむ雨の音
花吹雪狂女の袖に乱れけり
京女花に狂はぬ罪深し
朝櫻一度に露をこぼしけり
餅うるや春を近江の三井の寺
落葉焚いて春立つ庭や知恩院
川添ひの片頬つめたき二月かな
鍋さげて田螺ほるなり京はづれ
雉子なく滋賀の山人老ぬらし
春雨のともし火細し普門品
春雨の衣桁に重し恋衣
春雨や傘渡る裏の川
藪の中にほこらの灯見ゆ春の雨
春雨の貴船に詣る女かな
松一木獨り畑打つ男かな
鶏の築地をくづす日永かな
山里や薪割る庭の桃の花
金殿に灯す春の夕かな
春の夜の金屏くらし大広間
花の雲ふし拜み行く社かな
ちる時を夕風さそふさくらかな
夕暮の汐干淋しやうつせ貝