和歌と俳句

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

子規
隅田川堤の櫻さくころよ花のにしきをきて帰るらん

一葉
立ちまよふちりをしづめて桜花雨の後こそ色まさりけれ

一葉
初瀬山入相のかねに桜ちる夕べは春も寂しかりけり

一葉
春も今日暮れぬとつぐる山寺のかねのひびきに散る桜かな

子規
日のもとに 櫻さきけり 今ぞしる わたくしならぬ 神の心を

子規
水鳥のうきねのとけき春の日に櫻ちる也しのわつの池

子規
谷深みそこともしらぬ山鳥の聲のこだまにちる櫻かな

一葉
さくら花おそしと待ちし世の人を驚かすまで咲きし今日かな

順礼の笠に願ある櫻かな 虚子

三井寺をのぼるともしや夕櫻 子規

朝櫻一度に露をこぼしけり 虚子

大桜只一もとのさかり哉 子規

観音の大悲の桜咲きにけり 子規

ちる時を夕風さそふさくらかな 虚子

一葉
朝露のかかるありきもならひつれ岡辺の桜はなゆゑにこそ

一葉
さくら花さそふ嵐の音きけばわが心さへみだれぬるかな

故郷の目に見えてただ桜散る 子規

名は櫻物の見事に散る事よ 漱石

婆様の御寺へ一人櫻かな 漱石

車どめ老木の櫻咲きにけり 虚子

捕虜居る御寺の櫻咲きにけり 虚子

うたたねをよび起されて櫻かな 虚子

御車を返させ玉ふ桜かな 漱石

断礎一片有明桜ちりかかる 漱石

山三里桜に足駄穿きながら 漱石

川向ひ桜咲きけり今戸焼 漱石

松をもて囲ひし谷の桜かな 漱石

雨に雲に桜濡れたり山の陰 漱石

金屏におしつけて生けし櫻かな 虚子

提灯は恋の辻占夕ざくら 虚子

子規
いたつきに三年こもりて死にもせず又命ありて見る桜かな

左千夫
天つ日のうらうら匂ふ岡のうへの桜を見れば神代しおもほゆ

左千夫
病みこやす君は上野の裏山の桜を見つつ歌よむらんか

子規
ガラス戸の外面さびしくふる雨に隣の櫻ぬれはえて見ゆ

子規
櫻さく上野の岡ゆ見おろせば根岸の里に柳垂れたり

子規
櫻さく隅田の堤人をしげみ白鬚までは行かで帰りぬ

子規
玉川の流を引ける小金井の櫻の花は葉ながら咲けり

子規
ガラス戸の外に植ゑおける櫻花ふふむ咲く散る目もかれず見き

子規
春の日の御空曇りて隅田川櫻の影はうつらざりけり

晴嵐に松鳴る中のさくらかな 蛇笏

強力の笈に散る桜かな 漱石

上人を恋ひて詮なき櫻かな 虚子

憲吉
蒼杉のしげる木立のをちこちに櫻ほのぼのと明るく咲けり

晶子
根をはなち針にさしても咲くものは春のさくらと若きこころと