和歌と俳句

沈丁花 丁字 瑞香

子規
雨戸あけて手洗ひ居れば庭の闇に紛々と匂ふ沈丁の花

晶子
春むかし夢に人見し京の山の湯の香に似たる丁子の小雨

晶子
ゆきずりの丁子ゆかしやあけがたの夢に見に来む山下小家

牧水
沈丁花 青くかをれり すさみゆく 若きいのちのなつかしきゆふべ

山頭火
湛ふ水に沈丁花醒めて香を吐けり

牧水
めづらしく白雪降るとかしこみて部屋にこもれば匂ふ沈丁花

牧水
沈丁花いまだは咲かぬ葉がくれのくれなゐ蕾匂ひこぼるる

晶子
そぞろにも知らぬ世界の匂ひする臙脂の色の沈丁花かな

隣から吾子呼んでをり沈丁花 亞浪

沈丁の葉ごもる花も濡れし雨 秋櫻子

靴脱に女草履や沈丁花 秋櫻子

いただきを蜘がいためぬ沈丁花 虚子

庭石に花こぼしをり沈丁花 風生

沈丁の毬に芝生や庭好み 風生

沈丁を流るる虻やたてよこに 青畝

沈丁に小石平らや女官邸 播水

虻落ちてもがけば丁子香るなり 虚子

沈丁の咲きはじめたる白さかな 立子

沈丁の四五花はぢけてひらきけり 草田男

ゆつくり湯に浸り沈丁花 山頭火

沈丁や百夜通ひに匂ひける 喜舟

沈丁やまらうどに銅鑼叩かする 喜舟

窓あけて沈丁の香をいれてやる 秋櫻子

沈丁の香の強ければ雨やらん たかし

沈丁や夜を行きたりし薬とり 汀女

沈丁花あちこちにあり夕まぐれ 汀女

沈丁や風の吹く日は香を失す みどり女

沈丁の香にこの頃の月のよき 淡路女

沈丁や死相あらはれ死相きえ 茅舎

古き園に古き月いづ沈丁花 万太郎

沈丁に水そそぎをり憂鬱日 鷹女

憂鬱日沈丁の鉢を近よせず 鷹女

沈丁やをんなにはある憂鬱日 鷹女

沈丁花鳩の羽風はややきびし 汀女

沈丁がびつしより濡れて咲いてゐる 草城