和歌と俳句

高橋淡路女

口紅の濃からぬ程に男雛かな

風遊ぶ八重山吹のみづ枝かな

落椿紅も褪せずに流れけり

花椿ひろふ子に樹の高さかな

瓶にさしてはうすし花のいろ

さやさやと風音すなり花吹雪

春蘭やみだれあふ葉に花の数

浜風や遍路の妻のおくれがち

春の駒人に嘶き甘えけり

初蝶を見失うたる檜垣かな

風に堪へ花を去らざる揚羽蝶

現し世のきのうは過ぎぬ桜狩

花人に篠つく雨となりにけり

涅槃像女人は袖に涙かな

をりからの望月くらし涅槃変

むらさきに暮るゝ障子や雛の宿

降りそゝぐ雨にかぐろし蝌蚪の陣

八重桜たわゝに咲いて大月夜

沈丁の香にこの頃の月のよき

大粒の杉の雫や春の雪

荷ひ込む大海苔籠や浦の宿

海苔掻に粉雪ちらつく手元かな

海苔掻女濡れ手をかざす磯焚火

海苔採や女もすなる頬かむり

桜貝波打ち際は程遠し