和歌と俳句

雛祭

仕立もの持て行く家や雛の宵 漱石

雛の頬の冷たきに寄す我が頬哉 放哉

冠を正しまゐらす雛かな 喜舟

雛壇を濃うして灯ある起居哉 石鼎

雛の灯のほかとともりて暮遅し 虚子

雛しまふ子に遠く来る歓喜あり 石鼎

はしきよし妹背並びぬ木彫雛 秋櫻子

歌を詠む汐を汲む雛ならびけり 万太郎

晶子
めでたくも二心なき雛を置く小き人と親々のため

晶子
灯を置けど物をも云はず歌へども皷も打たず雛のえをとこ

晶子
白蘭の蕾のやうにあてやかに雛の袴はふくらめるかな

綿蔽うてあるに雛の口笑まし 石鼎

母の雛最も古りて清くあり 石鼎

茶を焙る我と夜明けし雛かな 水巴

古雛の高砂の髪も老いにけり 石鼎

いとほしや髪そゝくれて古雛 淡路女

雛しまふことおつくうに過しけり みどり女

縷ゆりて筥でる雛のなつかしみ 青畝

折りあげて一つは淋し紙雛 鷹女

土雛ありとしもなきあぎと哉 普羅

菓子を切る包丁来たり雛の宿 普羅

代々の一人娘や雛まつり 播水

いきいきとほそ目かがやく雛かな 蛇笏

雛壇や閏遅れに百姓家 青畝

更けまさる火かげやこよひ雛の顔 龍之介

壁かげの雛は常世に冷たうて 亞浪

雛の戸やのどにくすしの置俥 青畝

草庵や客泊むる間の雛仕舞 爽雨

嫁ぐなる別れの雛にかしづきぬ たかし

仕る手に笛もなし古雛 たかし