和歌と俳句

阿波野青畝

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

行年や這入りて見たる邸鶴

白夜具の薄く汚れて湯婆かな

藪垣の結ひしまりたる焚火かな

狩うどの背にぐつらりと獲物栄え

蟷螂や死にも果てずにはつ時雨

はでやかな大しだれなる餅の花

行春や近江いざよふ湖の雲

どの山の焼き明りかやなつかしき

道端に畦を焼きたるすぐろかな

縷ゆりて筥でるのなつかしみ

潮さゐにもまれもどりて潮干舟

烈風にしわり唸るや凧の袖

花あしびかづきて鹿の子くづり出つ

木をあげての紫咲きまもる

山吹に枕とり出す仮寝かな

茎立やきのふの雨の朝ぼらけ

簷だれのはしり漏りする菖蒲かな

吾妹子を乗せて漕出て浪すずみ

さみだれのあまだればかり浮御堂

梅天やもたれかはしし薮畳

垣乾しや昨日の梅雨の簑と笠

罠はねし一事たのもし梅雨の畑

夏山家かげりて雲の峰まぶし

夏山家なぞらへながらに家の数

庭の黄楊つくりすさめし夏山家

己が影跳びもはなれずみちをしへ

蚊の柱ちりもおほせず二日月

蚊柱や吹浚はれて余所にあり