石英のひらめくケルン灼けにけり
青富士の出没頻り雲涼し
立枯れは神慮なりけり星月夜
宵闇の三井寺下の灯は宿屋
足垂らし逃げゆく鷺や菱を採る
落石は富士薊にも夥し
箸墓の勝れたまひし野菊かな
手毬の娘寝し頃月の美しく
若死の母のかるたの世をおもふ
那智川の石ばかりにて梅多少
忍坂のそぞろに野火の暮れて消ゆ
耕や土を三州瓦とす
雨雲のひまに峯ある遍路かな
金盞花淡路一国晴れにけり
巣ごもりの母鳥ひもじからざるや
円空の微笑佛に蠅とまり
夏炉あり屏風うごかしつつ掃除
み吉野の青八重垣や閑古鳥
海髪を踏む跣なりけり星月夜
火の山は仮のかたちぞ天の川
南方にさまよふ魂を盆供養
大空のきはみと合ひし花野かな
大台の空隈もなき蜻蛉かな