和歌と俳句

耕し 春耕

たがやして社の花に午餉かな 蛇笏

木曽人は花にたがやす檜笠かな 蛇笏

耕牛の触れて波うつ籬かな 烏頭子

耕しの音さくさくと朝なりき 

望楼ある山の上まで耕され 虚子

春耕の鞭に月まひ風ふけり 蛇笏

耕の鍬もて舟行らむとす 青畝

耕の鍬かろがろと父帰り 青畝

耕人を見てたたづみて吾弱し 蕪城

耕の姐さまかむり吾妹なり 青畝

耕の鍬かたげつつ訪ひよりぬ 虚子

耕すにつけ読むにつけ唯独り 虚子

耕しの我のみ頼む痩地かな 虚子

春耕の子をいたはりて妻老いぬ 蛇笏

春耕の鍬かたぐ柄に手をたれて 蛇笏

断層の上下にありて耕せり 三鬼

老婆来て耕人の数一つ増す 三鬼

耕すがよし聖餐に腹円く 静塔

耕人に信夫の鐘の鳴りにけり 青畝

耕や大村湾の美しく 青畝

耕すや東洋の花うるほひて 静塔

牛の尾のおのれ鞭打ち耕せる 三鬼

全能の牛の目の玉耕せり 静塔

もんぺの脚短く開き耕す母 三鬼

耕しの母石ころを子に投げて 三鬼

耕や土を三州瓦とす 青畝

城あるを山人誇る耕しつつ 林火

耕すや胸に真赤な血を秘めて 静塔

縛らるることにも魅力耕せり 不死男

ここも耕し夫婦に畦の厚湯呑 静塔