花樗西湖の波のまのあたり
七十の海女達者かや夏の海
海女の目のなかに鮑の国つくり
さみどりはすぐこみどりに海女潜り
海女涼し玉依姫の血あるかや
干草の山うごきくる対馬馬
旅づかれ天道虫の手にとまる
山黴びて石ころの色かはりをり
夏籠や首楞厳経まだ知らず
三輪の里降りわたりたる霰かな
白魚火や国引せしといふ海に
波の底衣紋をぬぎし雛をり
流し雛日本の国の磯を去らぬ
耕人に信夫の鐘の鳴りにけり
くぐりては傘上ぐる藤の雨
春潮のささやく島の殿づくり
牡丹百二百三百門一つ
牡丹見て深く心に写したり
白牡丹暮れず関白自刃の間
ならべられつつ口動く鮎を買ふ
みよしののどんぞこの田の植ゑ終り
をだまきの花に床几や山登り
夏蝶の出入自在や仁王門
蟻地獄聖はめしひたまひけり
装束の真黒き鵜匠夕ごころ
百合涼し雄蘂はげしくうなづきて