葛飾の田螺を食ひし鴨なりき
天城より水迸り山葵咲き
かの岩をきはめし花の立石寺
雨雲のはしりとぶなり畦を塗る
畦塗をいそげいそげと奥曇る
旅淋し薺咲く田の涯しらず
さ山吹ところどころに濃山吹
朴の木の芽に暁の闇まとふ
古町の伊達の桑折に繭問屋
伊達の桑信夫の桑に線路あり
梨棚や一切経山を西に見て
また曲る那須のけむりや草摘める
代蛙鹿島の森の楽の如
苗代にあやめぐさ咲く十二橋
加藤洲の藪のまぎはのあやめかな
げんげんの花のさかりに関の雨
新涼や禅宗坊主美しく
四九日の僧美しき夏行かな
聾青畝ここに居るぞと青葉木菟
九頭竜の涯の燈台天の川
肌ぬぎの老女荒海育ちかな
老人の跣の指のまばらかな
一輪の龍膽餐けよ鶴の墓
せきれいの叩く泉石ひきしまり