山の辺のみちの細みち菱紅葉
蜜柑摘む穴師をとめら籠並めて
烏瓜炊ぎげむりのすいと伸び
しぐるるに物干しきりの飯場かな
火の子まひさやぐ壁炉の小天地
大寺や百の火鉢のお粗末に
虎落笛みつまたの花みな動く
虎落笛箕面の早瀬澄みきつて
淀君の秘史以後のこと鳰
クリスマスカードの加奈陀花の國
磐境として突き出たり春の潮
ほんだはら速吸門も渦に浮く
沼の春家鴨は家鴨鴨は鴨
山越しの同じ眺めの畑打
横丁の春泥地獄燈をつらね
滝凍てて制多迦童子ころびをり
鍋島の鴉まじるや春鴉
耕や大村湾の美しく
聖廃墟はるかなる火の畦焼ける
残壇にちらばる天使春の空
ケロイド無く聖母美し冬薔薇に
磔像の全身春の光あり
萌えはしる蔦御手ひろげたまふ主に
たんぽぽや信者の寝墓ばかりとぞ
名草の芽はグラバーの址に出づ