落飾の娘まじへてかるた会
侘助は寒いたみしてやや盛り
密室が麹臭くて寒造り
鶯や法然院主留守の日も
白魚網一番星の閃めきに
花びらのつらなる雛の桃挿され
山寺の破風のひろさや春の月
青淵につづき黒淵春の山
脊ぐくまる葵の上や薪能
金髪のごとく美し木の芽伸ぶ
花並木疎水とどまるときもなし
剥く土筆ベルナデッタの墓のもの
藤の根の這ひて石段とぎれがち
用のなき堤に似たり花茨
十字架を負ひ蜘蛛の囲よ杜若
天龍寺あさざいつぱい咲きわたり
安居居士栴檀林をあゆみ去る
鴟尾躍るしばし大和の菜殻火に
涼風にたたきのめされ舟棹せる
涼風に打擲されて笑める客
宝石となる一瞬の金魚玉
をだまきや関の石垣くづれきし
手の平にひたひをささへ暑に耐ふる
我が右の麻座布団のあまりあり