和歌と俳句

土筆 つくし

瓦屑起せばほめくつくしかな 犀星

土筆剥きに我も加はりし燈下かな 播水

土筆かさかさ音を手ざはりを一包み地べた 碧梧桐

夜もすがら瓦焼かるゝ土筆かな 喜舟

二三本毛氈の上の土筆かな 青邨

つくし摘み野島の風をさむみつつ 鴻村

行平に土筆煮え居る母の居間 虚子

ひよろひよろとまことに高き土筆かな 青邨

風強くつくしんぼうは揺れてゐる 青邨

灯のしたに土筆の袴とり競ひ 立子

賑やかに戻り道なり土筆摘 立子

泥つけし土筆のはかまいく重ね 立子

によきによき土筆がなんぼうでもある 山頭火

子のたちしあとの淋しさ土筆摘む 久女

知紀のいほりの庭の土筆かな 鳳作

茂吉
春川のほとりに生ふるつくづくし生ふれば直ぐに摘みて食べむ

土筆野や眼にいつまでも面影の 石鼎

土筆野や誰かわらへる声すなる 石鼎

土筆野やはらばへば眼に見ゆるもの 石鼎

色籠の底に穂みゆる土筆かな 石鼎

振りかへり消ゆる土筆もありにけり 汀女

土筆摘んで立ち上りわが影法師 立子

つくづくし西湖の塔に似たるかな 茅舎

水きよく誰が摘みすてし土筆かな 麦南

津の人のかへりみぬ土筆ここだ摘む 

うち交る草も見覚え土筆籠 汀女

芝ひたす水きよらかに土筆萌ゆ 蛇笏

土筆添へて夕餉の箸のはじまりぬ 

きさらぎの野の土掻けばつくづくし 蕪城

日に少しよひつゝ土筆摘んでをり 立子

墓一塊土筆長けなばかくれなむ 青邨

わが机妻が占めをり土筆むく 風生

目のまへの山の雪はも土筆つむ 万太郎