瀬戸に咲く桃の明方の明日の船待つ
人々のひだるうさくらちりくる阪下りてゆく
あちこち桃桜咲く中の山がひの辛夷目じるし
柱によれば匂ふつゝじうす紫の夜の花なる
東駒に西駒のひだの深くに残る雪
大仏蕨餅奈良の春にて木皿を重ね
なつかしき花ミモーザの一本に御手洗をはなれ
土筆かさかさ音を手ざはりを一包み地べた
磯山の日うらゝかな雪解かな
屯田の父老の家かすみけり
十勝野に我立つと四顧の霞かな
古き梅古き柳や小六条
棕櫚の葉に枇杷の葉に梅の落花かな
朝日さす杉間の花を数へけり
十三塔花七めぐり廻らせる
花屑もかかる隈なき大河かな
棕櫚高く見ゆ千本の花の雲
庭踏むや落花をさそふ通り雨
幕濡れて夕しづまる落花かな
把栗寺や花散りかかる藪表
花一木ありて貧しや把栗寺
落柿舎や花の流れの一またげ
海明りして菜の花に行く夜かな