和歌と俳句

河東碧梧桐

かねて見し不折の筆の梅があり

島海苔を太布のやうに畳みけり

燈台の人も岩海苔掻く日かな

春の水古柴網にかゝりけり

や子安地蔵の高い木に

裏富士の囀る上に晴にけり

雪解水書架の上より流れけり

下萌や石置いて亭を営むと

四蹄白の二歳たのもし草萌る

東風吹いて一夜に氷なかりけり

雲雀の句野に住む人の所望かな

埒越えて飛ぶ馬もあり鳴く雲雀

流氷のいつ戻りけん冴え返る

一番の渡り漁師や雪解風

賑やかな町に寺あるかな

淡雪や氷跡なき湖の上

淡雪や蚕神祭の幟たつ

山焼けば狐のすなる飛火かな

焼野来し川風に乗る渡かな

蝦夷に渡る蝦夷山も亦た焼くる夜に

難所なる蠑螺上りや雉の声

大いなる港に作るかな

熊の来て牛闘ひしかな

藪の中の家の花見ゆ春の月

虎杖やガンピ林の一部落