縁日の昼も店出す柳かな
旅にして昼餉の酒や桃の花
躑躅白き小庭も見えて加茂の家
カナリヤの夫婦心や春の風
梅折つてかつ散る花や眉の上
残る雪鶴郊外に下りて居り
人を見て蟹逃足の汐干かな
鶴の羽や白きが上に冴え返る
口あいて居れば釣らるゝ蜆かな
春浅き水を渉るや鷺一つ
西門の浅き春なり天王寺
馬で来て灸師だのみや二日灸
両肩の富士と浅間や二日灸
律院の松亭々と辛夷かな
養生の酒色に出づ宵の春
夏近き犬の病もおそろしき
汐落ちて貝掘りそむる春寒き
母衣を引く馬の稽古や春の雪
曲すみし笛の余音や春の月
春月や上加茂川の橋一つ
樒かとまがふ山路の馬酔木かな
天領の銃音慣れて日永かな
白馬に使者にほやかや春の宵
貝を生けし笊沈めしが水ぬるむ