筋違にふとん敷たり宵の春 蕪村
公達に狐化たり宵の春
怪談に女まじりて春の宵 子規
堆き茶殻わびしや春の宵 漱石
古寺に鰯焼くなり春の宵 漱石
春の宵神木折れて静かなり 漱石
鉄幹
うしろよりきぬきせまつる春の宵そぞろや髪の乱れて落ちぬ
晶子
人かへさず 暮れむの春の 宵ごこち 小琴にもたす 乱れ乱れ髮
晶子
ふしませと その間さがりし 春の宵 衣桁にかけし 御袖かづきぬ
晶子
春の宵を ちひさく撞きて 鐘を下りぬ 二十七段 堂のきざはし
灯ともしに門の行燈や春の宵 虚子
養生の酒色に出づ宵の春 碧梧桐
晶子
春の宵壬生狂言の役者かとはやせど人はものいはぬかな
白馬に使者にほやかや春の宵 碧梧桐
晶子
階上の戸を閉めに行く春の宵臆病の子もにくからぬかな
春宵の花の渡舟が残りけり 万太郎
春宵や屋根から上の花の闇 万太郎