和歌と俳句

茶摘み

摘けんや茶を凩の秋ともしらで 芭蕉

菅笠を著て覗き見る茶摘かな 支考

一とせの茶も摘にけり父と母 蕪村

屋ね低き声の籠りや茶摘哥 太祇

三日月に木間出はらふ茶つみ哉 太祇

うぐひすもうかれ鳴する茶つみ哉 一茶

しがらきや大僧正も茶つみ唄 一茶

欠伸にも節の付きたる茶つみ哉 一茶

川雰のまくしかけたり茶つみ唄 一茶

氣の輕き拍子也けり茶摘歌 子規

我庭に歌なき妹の茶摘哉 子規

むかうむいて茶摘女の歌ひけり 虚子

ねもごろに一本の茶を摘みにけり 鬼城

千樫
わが母の今日は出で立ち茶を摘むにわれもわが兒も出でて摘みつつ

竹林に透く日となりし茶山かな 蛇笏

茶摘女の手拭咥へ犬白し 櫻坡子

手拭風に再び解けて新茶摘む みどり女

茶摘女の籠おどらせて追ひ寄りし みどり女

御僧と宇治の茶摘を歩きけり かな女

簀の中に蝶をなぶりて茶摘かな 青畝

むさし野もはてなる丘の茶摘かな 秋櫻子

道のべの茶すこし摘みて袂かな 久女

門内の茶摘畠を顧みし 素十

籠編んでひとつ家あり茶摘道 爽雨

両側に相向きあうて茶摘みかな 石鼎

向きあうて茶を摘む音をたつるのみ 爽雨

濃みどりの茶摘の三時唄も出ず 静塔

富士を背に富士を真向きに茶を摘めり 立子

幾町歩茶摘の道は青からず 静塔

茶摘女の蝶にさはりしまぐれ指 静塔

笠の恩ながし茶摘女胸に抱き 静塔

茶摘姥身を捨山の深みどり 静塔

鍔広し茶摘帽子を茶にかぶせ 静塔

大向富士茶摘笠解かしむる 静塔

茶摘唄姉に交じへて口籠る 静塔