和歌と俳句

燕の巣

巣燕に雑巾かけし柱かな 白雄

巣乙鳥の下に火をたく雨夜かな 白雄

巣を守る燕のはらの白さかな 太祇

巣乙鳥や何をつぶやく小くらがり 一茶

巣燕にランプ淋しや峠茶屋 石鼎

千樫
わが家に今年も巣くふつばくらめ出で入る見つつ涙ながれぬ

巣燕にわりなき柱時計かな 虚子

巣燕に炭火もえゐる大炉かな 石鼎

巣燕の羽の紫紺や土間の梁 石鼎

黄口や餌を顫ひ呼ぶ燕の巣 石鼎

巣燕の眼をあげてゐる黒さかな 石鼎

燕鳴く巣に黎明の影さしぬ 麦南

巣燕に障子のうちの人静か 淡路女

巣燕に外は鏡のごとき照り 誓子

蝙蝠傘をたたみて燕の巣の下に 誓子

一刻を知らぬひととゐ燕の巣 誓子

街道につくりてやめし燕の巣 誓子

巣燕や眼見えざるこゑごゑに 誓子

せまき巣にひらく燕の翼見ゆ 誓子

巣燕に金星見えぬとも限らず 鷹女

巣燕に昼のラヂオが楽送る 汀女

燕の巣いそがしデスマスクの埃 三鬼