和歌と俳句

鳥の巣

闇の夜や巣をまどはしてなく鵆 芭蕉

鷲の巣の樟の枯枝に日は入ぬ 凡兆

鳶の巣としれて梢に鳶の声 北枝

あなかまと鳥の巣みせぬ菴主哉 太祇

鳥の巣のありあり見ゆる榎哉 一茶

鳥の巣や江畔のポプラ伸びやまず 橙黄子

鳥の巣やそこらあたりの小竹の風 不器男

大木や鳥の巣のせて藤かかる 虚子

小鳥の巣二本の枝にしつかりと 素十

巣の藁の垂るるなくんば知られずに 誓子

藁しべは巣を荒されし後も垂れ 誓子

巣つくりの藁空中に曳いてとぶ 誓子

遠くよりわづかの巣藁咥へ来し 誓子

藁しべを一尺ばかり巣に垂らす 誓子

鳥の巣拾ひ幸福載せし如く持つ 多佳子

雨風に巣藁のなびき法華尼寺 多佳子

目白の巣我一人知る他に告げず たかし

巣づくりの鳥影窓に朱唇仏 不死男

の巣の羽落ち落ちて地に達す 誓子

鳥の巣を地にこぼせしか宮大工 静塔

鳥の巣の転落瓦解卵割る 静塔

烏の巣

巣つくるや憎き鴉も親ごゝろ 白雄

野烏の巣にくはへ行木芽かな 几董

巣に下りし烏にゆるゝ梢かな 橙黄子

谷杉につよき落暉や鴉の巣 櫻坡子

巣鴉や春日に出ては翔ちもどり 不器男