和歌と俳句

橋本多佳子

木瓜紅く田舎の午後のつづくなる

嘆かじと土掘る蜂を見てゐたり

啼くや胸ふかきより息一筋

夜の雨万朶の花に滲みとほる

足濡れてゐれば悲しきかな

過去は切れ切れは房のまま落ちて

起りたる桜吹雪のとどまらず

蘇枋の紅昃る齢同じうす

木蓮の一枝折りぬあとは散るとも

咽喉疼き旅寝や吻づくる

祷りちがふ三色もてすみれ一輪なす

夫婦して耕土の色を変へてゆく

どこまでも風蝶一路会ひにゆく

雀の巣かの紅絲をまじへをらむ

しやぼん玉窓なき厦の壁のぼる

旅の椅子仔雀はいま地にゐて

童女走り春星のみな走りゐる

椿落一つの墓を涜しつづく

身の入れ処なし紅梅の枝尖る

鳥の巣拾ひ幸福載せし如く持つ

雪解川濁る勢ひを合しけり

男女の雛枯山の日は永きかな

蕊高く紅梅の花ひとつひらく

さからへる手に春水のひびきくる