屠蘇注ぐや袂の隙に炭赤し
縫始め今暖めて来し手かな
人のうしろに襟合せたり初鏡
福寿草紙風船とあることも
ひややけく神おはしけり初竃
初刷に廚のものは湯気立つる
人のつく手毬次第にさびしけれ
ひとり摘む薺の土のやはらかに
文書くもかごとも日向福寿草
初凪の遊覧船の高浮び
手毬唄おぼえしころの任地かな
雪空のところもかへず羽子をつく
つく羽子の音のつづきに居る如し
次の子も屠蘇を綺麗に干すことよ
若菜摘む人を恋ほしく待つ間かな
ぢやんけんに今日の春着の長袂
羽子つけば四方の谺に松秀で
初夢のほのぼのと子に遠きかな
おのがじし炭斗満たし去年今年
松納む月明かかりし一夜明け
切山椒浅草はかく去りがたき
初富士や母を珠ともたとふれば
かくぞとて幼なに持たす屠蘇の杯
裏白や父が飾れば青まさり