俳句案内

尾崎放哉

十一
十二

あすは雨らしい青葉の中の堂を閉める

一日物云はず蝶の影さす

友を送りて雨風に追はれてもどる

雨の日は御灯ともし一人居る

なぎさふりかへる我が足跡も無く

軽いたもとが嬉しい池のさざなみ

静もれる森の中をののける此の一葉

井戸の暗さにわが顔を見出す

沈黙の池に亀一つ浮き上る

鐘ついて去る鐘の余韻の中

炎天の底の蟻等ばかりの世となり

山の夕陽の墓地の空海へかたぶく

柘榴が口あけたたはけた恋だ

たつた一人になりきつて夕空

墓原路とてもなく夕の漁村に下りる

高浪打ちかへす砂浜に一人を投げ出す

雨に降りつめられて暮るる外なし御堂

昼寝起きればつかれた物のかげばかり

何も忘れた気で夏帽をかぶつて

ねむの花の昼すぎの釣鐘重たし

氷店がひよいと出来て白波

父子で住んで言葉少なく朝顔が咲いて

砂山赤い旗たてて海へ見せる

声かけて行く人に迎火の顔あげる

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