尾崎放哉

教場に机ばかりや冬休暇

新しき電信材や菜たね道

鯉幟を下して居るやにはか雨

露多き萩の小家や町はづれ

寒菊やころばしてある臼の下

病いへずうつうつとして春くるる

行春や母が遺愛の筑紫琴

見ゆるかぎり皆若葉なり国境

元日を初雪降るや二三寸

雨はれてげんげ咲く野の夕日かな

峠路や時雨はれたる馬の声

森の雪河原の雪や冬の月

鯛味噌に松山時雨きく夜かな

茶の花や庵さざめかす寒雀

煮凝や彷彿として物の味

開墾地種播く人に晴れにけり

春浅き恋もあるべし籠り堂

露ふむで指す方もなき花野

行秋の居座り雲に夜明けけり

水汲みに来てはの影を乱す

山吹やほきほき折れて髄白し

鯛膾二舟相寄るかな

春水や泥深く居る烏貝

灌仏や美しと見る僧の袈裟

心太清水の中にちゞみけり

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