和歌と俳句

朧 おぼろ

辛崎の松は花より朧にて 芭蕉

おぼろおぼろ灯見るや淀の橋 鬼貫

星崎の朧や低し亭の上 越人

三日月のしばらくながら朧かな 也有

辛崎の朧いくつぞ与謝の海 蕪村

朧朧ふめば水也もよひ道 一茶

夕されば朧作るぞ小藪から

すみだ川くれぬうちより朧也

一葉
おぼろおぼろ月はかすみて我が岡の梅遠じろくみゆる夜半かな

白き山青き山皆おぼろなり 子規

其夜又朧なりけり須磨の巻 漱石

暁の夢かとぞ思ふ朧かな 漱石

羽団扇や朧に見ゆる神の輿 漱石

伽羅焚て君を留むる朧かな 漱石

わが歌の胡弓にのらぬ朧かな 漱石

五十町上れば灯す朧かな 碧梧桐

朧とは今日の隅田の月のこと 虚子

芦生ふるかぎり潮押す朧かな 亞浪

鯛膾二舟相寄る朧かな 放哉

浦の男に浅瀬問ひ居る朧哉 漱石

果樹園に積む石ありておぼろかな 蛇笏

假名書の御経と答へ朧かな 万太郎