和歌と俳句

朧 おぼろ

薬園に伏樋のもるるおぼろかな 普羅

風呂の戸にせまりて谷の朧かな 石鼎

経政の琵琶に御室の朧かな 漱石

妻あらば衣もぞ掛けん壁おぼろ 石鼎

蛙ともならまし悔や草朧 石鼎

月隠す雲の朧や大社 石鼎

つくばゐに花の散りうく朧かな 万太郎

大橋の向ふ細りに朧かな 草城

林泉の朧や明き燈一つ 草城

水輪たつるどの蛙鳴くおぼろかな 石鼎

塀外へいつ蝶消えしおぼろかな 石鼎

芝の鹿追はれて逃ぐるおぼろかな 石鼎

そのなかに角なき鹿のおぼろかな 石鼎

ぬかるみに夜風ひろごる朧かな 水巴

風見えて朧の庭の広さかな 万太郎

この朧海やまへだつおもひかな 石鼎

月の出や動き渡れる朧空 花蓑

庵松の幹厳とある朧かな 石鼎

星二つ並ぶもありし朧かな 石鼎

おぼろおぼろ水飲みに来し井の辺 普羅

子守沙弥心経うたふおぼろかな 茅舎